スポーツチャンバラ 田邊哲人会長のインタビュー
インタビュー記事No.6
「 第32回全国少年少女選手権大会(100の甲子園 第1回大会)」を終えて

田邊哲人会長
INDEX
74.「部外競技 本部講習会」
73.「ワンステップ上へ」&「得物自由(異種対戦)解禁」
72.平成27年度 本部講習会の解説
71.提出書類作成について
70.本年の本部講習会
69.第40回世界選手権大会
68.第40回全日本選手権大会
67.日本体育協会 加盟
66.田邊会長 藍綬褒章 受章!
65.「第39回全国少年少女選手権大会について」
64.「第262回大学生対象本部講習会」
63.「指定審判員」と「指名審判員」
62.スポチャンクラブと"オールマイティ審判"
61.平成26年度 本部講習会
60.第39回世界選手権大会
59.第68回国民体育大会in東京
58.審判員審査 について
57.種目別 1級基本動作審判員について
56.第38回全国少年少女選手権大会
55.1級審判員及び検査役の資格、及びベスト(ビブス)着用の義務
54.大会の出場資格について
53.称号(錬士・教士・範士)について
52.指導者の資質
51.都道府県市区町村 体育協会加盟への勧め
50.第38回世界選手権大会
49.公益財団法人 日本体育協会加盟祝賀会
48.第6回アジア・オセアニア選手大会
47.第38回全日本選手権大会
46.第4回田邊杯争奪戦スポーツチャンバラ大会
45.第7回ヨーロッパ大会 in Russiaについて
44.本部講習会(直伝会)について
43.棒・杖について
42.楯長剣
41.第37回世界選手権大会
40.新しい人
39.総会報告と異種競技審判員の説明
38.全国レク大会・全国スポレク祭・国体について
37.第36回世界選手権大会について
36.第6回ヨーロッパ大会について
35.団体戦について
34.第35回世界選手権大会
33.下期講習会、短刀のルール改正
32.第4回アジア・オセアニア大会について
31.本部主催講習会(上半期)
30.第35回全国少年少女大会について
29.指導者について
28.短槍について
27.師範・師範代について
26.第34回世界大会
25.初心者への指導方法について
24.一級審判員及び一級審判員講師講座について
23.スポチャン記念碑
22.第34回全日本大会
21.第34回全国少年少女大会
20.第5回ヨーロッパ大会を終えて
19.クラブ制度について
18.第33回世界大会
17.第20回スポレク祭
16.第2回アジア大会
15.第33回全日本大会
14. 基本動作一級審判検定
13. 第33回全国少年少女大会
12. 第4回ヨーロッパ大会
11. 段級について
10. 2006年10大ニュース
9. 小太刀護身道からスポチャンへ
8. 小太刀護身道のはじまり
7. 基本動作の解説
6. 第32回少年少女大会を終えて
5. 「師匠」について
4. 第32回全日本大会を終えて
3. スポーツ拠点推進事業
2. 基本動作について
1. 第31回世界大会を終えて

今回は先生の道場についてのお話しをお伺いする予定でしたが、8月20日に由比で開催された第32回全国少年少女大会にていてお聞きしましょう。
今大会は、スポーツ拠点推進事業に国から認定され、由比町での「100の甲子園 第1回大会」となりましたが、如何でしたか?


  最大の収穫は、この全国少年少女大会から世界選手権への日本代表選手(基本動作)に選ばれるような選手がいたということです。細部に言えば、小学校・中学校の女子の基本動作の技術の向上が目覚ましく、その完成度の高さに注目しました。競技力の向上、なかんずく「基本動作に内包される精神力、自分力を表現する」という基本動作の真髄をアスリートのみならず皆が徐々に理解してきたという事でしょう。

  基本動作は、「インタビュー2」でも述べたように、初めは「模」から、先生の言われるとおりに手順に従ってやれば良いんだろうと言うレベルだったのが、今大会ではそれをはるかに超越した高度なものとなっていました。
基本動作は、大人も子供も同元で戦うわけですから、年齢差は関係ありません。その意味で、大人をも凌ぐ日本代表を発見できたような気がします。特筆すべきは、四国ブロックの野村五月選手や関東ブロックの鎌田朱美選手、そしてその周辺の演武は素晴らしく、観る人の多くに感動をも与えたことでしょう。そしてまた、このような過不足なく美しい基本動作を演出できるように指導した先生方にも敬意と感服をいたします。
今後、この「甲子園大会 in 由比」に出場できる選手というものが各地区の代表選手であることは元より、世界大会の代表選手となり得る最短の道であると思います。
昨今ややもすると自由・平等をはき違え、順序序列・長幼の礼を見失っている風潮の中、あらためて一石を投じえた深淵な「基本動作哲学」が共有できたように思います。




基本動作の形についてご説明下さいますでしょうか?


  それでは具体的に説明しましょう。

1)
  「気を付け」の号令で、中指を自分のももに軽く付け、両肩を引き、胸を若干出して張り、背筋を伸ばし顎を締める。目は遠山を見るが如く半眼とし、当然口は閉じます。

2)
  「礼」の号令でおおむね15度くの字に躰を折ります。頭だけを下げたりせず、視線は3メートル先向こうに落とします。
そして、1拍子、「礼」で躰を折り、2、3で躰を折ったまま静止、4で躰を元に復します。「礼」は礼式であり、長すぎても短すぎてもいけない。そして軽快且つ迅速に動きます。
美しい敬礼とは動作をキビキビ行うと観る人にも大変好感の持てる「礼」となります。ダラダラはいけません。
この「礼」ひとつだけでも、演武する人の物事に正対する姿勢や習熟度が一目で判ります。

3)
「構え刀」は、剣先の高さは3メートル向こうに対峙した相手の眉間(うと)に着ける位置です。(点線で繋ぐ)相手からは剣の長さは判らず、剣が点に見えるのです。これは「中段の構え」と言い、昔は「正眼の構え」と言いました。
構え刀 手首を中心として自分の肩と剣の角度は120度くらいでしょうか。肩と拳までの腕の角度と、拳から剣の角度が同じでなければなりません。それが美しい線です。剣を握ったときは、親指と人差し指の付け根のV字の延長に自分の正中線がくるように、手首を少し内側に捻る様にします。そうしないと剣の刃筋が立たない。剣が真っ直ぐ振りおりなければならないと言うことです。我々が見れば、一目でぱっと判断できるものなのですから。
利き手と反対の手は、手を平にして腰辺を押さえ肩をぐっと引く。これは武士が刀の鞘を押さえる感じでやれば良いのです。この姿勢を「向勢」と言います。
また後ろ足は、膝が曲がらず斜め直線的であるのが正しく、踵はおおむね卵1つ以下くらいの高さを上げます。上げ過ぎてはいけません。その理由は、「構え」とは相手に隙を見せない姿勢を保持しする事ですから、いつでも前後左右に動ける状態、いつでも前へ出られるように前の足には体重の多くをかけ、後ろ足は蹴足状態にしているわけです。そのための用意なのです。それゆえに踵を床に付けたまま、又は膝を折るのは居ついた状態となるので良くないわけですね。
後ろ足は若干の鐘木になっても良いが、前足は真っ直ぐ剣先と同方向に前に向き、剣を持つ利き手の柄頭は、腰からおおむね30センチ離します。その時おへそが45度斜め前に向き、後ろ足も同方向を向きます。前足が後ろ足と同じ方向を向いている人を時々見掛けますが、そういう姿勢で前へ出るとつんのめる。そのような悪癖は早い時点で直さなければなりません。
競技になるとそこだけでも落とす審判がおりますので注意が必要です。勝ち上がってくる選手は、そう言う手順がきちんと出来ているのです。
前足は突っ張らないようにして、緩やかに、しかも膝から下は直立です。

4)
次に、「上段の構え」
肘を曲げて、自分の髪の毛の生え際から拳1つ当てがった位の位置に、刀を持った手を構えます。その刀線は、垂直から斜め45度に傾け固定保持します。

5)
「上段に構え」から「面」を打つ時には「押さえ打ち」と言い、打つ瞬間は剣先を水平以下に倒します。その反動で剣線の描く弧が大きければ大きいほど威力は増すものだからです。「押さえ打ち」とは、人差し指と親指だけで軽く持つような感じで、スナップを効かせて回転を利用して振ったその時に、今度は小指と薬指をきちんと締めます。そうすると剣先が早く鋭く打てるようになります。次に「面」を打った時の自分の拳の高さは、自分の肩の高さと水平となるよう真っ直ぐ肘を伸ばし、同時に前足が一足長半、前へ出ます。つれて後ろ足も前に出ます。気合いは打つ部位を呼称し、この場合「面」となる訳ですね。踏み込み足の幅は、一足長半。一足長とは、その人の踵から足先までを言います。足の大きさが25センチの人の場合の一足長半というと、おおむね37、8センチと言うことになるかな。もっと出ることができる人は40センチでも50センチでもいいですよ。 上段の構えから「面」へ
踏み込み足は一足だと容易ですが、踏み込みが延びると、体勢が崩れたり踵を痛めたりしてなかなか難しいものです。然るに一足長半以上飛び出すワンポイントアドバイスは、腰を微妙に落とし重心を若干下げるという事です。重心を下げると正中線を崩さすしっかり打つ事ができます。腰を落とさないと反動で前のめりになってしまいがちです。正中線とは自分の全体重の中心のある体の中心線のことを言い、正中線が取れていない人の使術は、観ている者にも不安定感を与えます。
腰を微妙に下げて前へ出る時は、飛び上がるのではなく"地に低く、軽快、迅速"という文言で説明します。すり足ではありません。紙一枚くらいでも床から足裏が離れていること。すり足にならず一足長半以上前に出て、そしてピタッと止まった時、足裏が床につき自然とパーンと音が出ます。足の音が出るのは瞬間の受け身であって、出そうと思って出るものではなく、自ずと自然に出るものです。音が出るのが良いという訳ではありませんが、正中線を保ち、腰を落とし一足長半前へ出ると自然に音が出るのです。正中線が正しくあると、前の足は平均に床につき、音がすれば自分でも実に気持ちが良いものです。また足首を痛めたり、足裏を擦り剥く人は、おおむねこの使術が理解されていない人でしょう。

とまぁ、基本動作を手順(マニュアル)で示せと言われればこの様になるわけですが、いかにせんマニュアルには心がありません。「何センチ離す」とか「上へ・下へ」などというようなマニュアルがあると、そこばかりに囚われ過ぎ、本質を見失う事になります。形ももちろん重要ですが、精神力、人間性を高めることも重要です。そしてやはり基本動作の内包している「何事にも負けないぞ」という気迫、力強さが必要でしょう。更に婦女子におかれては、護身という意味があるわけですから美しさの中にも凛々しさが内包されていなければなりません。これらに心が加味され、華麗な基本演武となります。
基本動作は、この5つの形の中にスポチャン精神が極めてシンプルに集約され、移入されているもので、私はこの30秒足らずに、その人の修行道、物事に正対する気構え、その人の信頼、素直さ、真面目さのおおむねが判ると言っても過言ではないと思っています。
この30秒の短い瞬間ではありますが、それらを踏まえて錬成することが肝要でしょう。

   更に基本動作は実社会に大いに役立つと思います。強いとか速いとか「力の段階」で心が留まるか、人格形成という「深淵な道」に入るかは、その学ぶ人の心構え・姿勢にありますが、しかしながら「力」はやがて衰え、技はいつしか敗れる。人間の究極の目的は、「生涯完成」にあるとするならば、長い生涯、何事にも負けることのない「尊厳の道創」として、そして古人の武の道の片鱗にいささかでも触れ、なかんずく己の修養としてこの「30秒の集中」を、今一度見つめ直してみる事が肝要であろう。
基本動作により、姿勢が良くなる・軽快に動ける・気合い発声によりストレス解消になる・号令に反応する俊敏な動きができる・勇気が湧く・向勢になる・護身に役立つ等様々な効用があるが、もとより生涯教育であり、人づくりである事は論を待たない。しかしがら、いつしか日本人の忘れかけている日本人のアイデンティティーにいささかでも触れることができるかもしれません。

   基本動作は、ホームページに掲載されている[2005年度版の最新版基本動作のビデオ]や[あゆみ]、田邊哲人著[スポチャンをやろう]、また[インタジュー2]も参考にして勉強して下さい。
また、現在ルールブックを制作中です。御期待下さい。



有り難うございました!
次回のインタビューは基本動作の[小手打ち] [右から胴] [左から足] [突け]の解説を予定しています。お楽しみに!

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